[美術館感想] 異端の奇才ビアズリー展 感想

美術館

 三菱一号美術館で開催している「異端の奇才 ビアズリー展」に行ってきました。

オーブリー・ビアズリーについて

 オーブリー・ビアズリーは1872年にブライトン(イギリスのイングランド南東部に位置する都市)で誕生。16歳でロンドンに出ると保険会社で働くかたわら独学で絵を描き続けた人物。独学ながら様々な小説等の作品の挿絵を手掛け、それが評価された。持病の結核が悪化し、1898年に25歳で他界した。

 ビアズリー氏は、昼は保険会社に勤め、夜は遅くまで絵を描くという生活を送っていた。暗い闇の中でビアズリー氏はろうそくの明かりだけを頼りに精緻な線描や大胆な白と黒の色面からなる、きわめて洗練された作品を描き続けた。

 今回の特別展は彗星のごとく現れた時代の寵児のビアズリーの早すぎる転落から最晩年までの作品が一堂に集結したビアズリーの大回顧展になります。

 白と黒で描かれたビアズリー氏の世界を楽しむことができました。

 

感想

 ビアズリー氏の作品について感想を述べていきたいと思います。

 ビアズリー氏の作品はポストカードやB5サイズといった小さな作品が多くありました。ろうそくで照らしながら描けるサイズで描いているように感じました。そのどれもが白と黒といった2色で描かれていて、非常に緻密な模様や線の重なり、何も描かれていない白い余白、柔らかな人の白。小さな作品でありながら情報量が多く、非常に満足度が高いものでした。

 小説の挿絵で描かれた作品が多く、どれも目を引くような作品になっていました。少しデフォルメされた人物の身体や表情はあまり昔の作品のようには思えませんでした。現代の漫画とかの表現にも似ているような気もしました。

 雑誌の表紙やポスター等の作品もありました。そのどれもがシンプルながら目を引くような作品になっていました。現代でもとにかくシンプルな広告デザイン、余白をたっぷり使って注目させたいものをしっかり示すようなデザインが多くありますが、ビアズリー氏の作品からもそのような感覚を感じました。

 ビアズリー氏の作品を見ていて思ったのは、人間(人のような形のもの)の存在感が非常に強いと思いました。人間の服やその周りは模様や書き込み、べた塗等で細かく描かれているのですが、人の肌は真っ白でした。それによって黒と白のコントラストが際立って人の存在が浮かび上がるように明瞭になっているのかもしれません。

 そして、その人間の白がすごく柔らかに感じました。丸みを帯びた線画がそう感じさせるのか、デフォルメかかった女性のシルエットは妙に色っぽく、エロさを感じました。でも下品な感じではない。

 その中でちょっと下品な作品というのもありました。ビアズリー氏は生涯で卑猥なものを連想させるような作品を制作し、晩年自分の死期を悟った際にそれらの作品は捨てるようお願いしていたそうです。しかし、それらは捨てられずに残されており今回の展示会で展示されています。…ちょっとかわいそう。

 卑猥な絵が展示された部屋は18歳未満は入れはいようにカーテンがされており、まるで本屋の18禁の幕のようになっていました。こういった展示の仕方は見たことがまだなかったので新鮮でした。

 展示室の絵は人の下半身が露出されているものや、おならをしている絵等。確かにここまで見てきたビアズリー氏の絵からすると卑猥な描写が多い作品になっていました。自分が気になったのはおならをしている絵で、漫画とかの表現にあるようなおならの描写がされているのが印象的でした。昔でも、漫画のようなデフォルメされたおならの描写を描いていたことに驚きました。

 ビアズリー氏の晩年の作品群を見ると、さらに絵の緻密さが上がっているのがわかりました。点描という技法が使われ、点描によって服等がより柔らかく感じるようになりました。複雑な白と黒の世界はさらに奥行きが増し、見れば見るほど新たな発見があり、初期の頃から洗練されたきたビアズリー氏の絵の極致がそこには展示されていました。

終わりに

 美術館の作品にはしっかり近づくことができるので、作品をじっくり見ることができました。各部屋の最初にある説明文は展示会の雰囲気にあったデザインがされており細部まで力が入っていました。また各部屋にビアズリー氏の年表があり、彼が何歳のころの作品が展示されているかわかるようになっていたのがよかったと思いました。

 25歳という若さで亡くなられてしまったオーブリー・ビアズリー。以前訪れたモネやガレの展示会でみた彼らの年表と比べると、ビアズリー氏の年表は短いものになっています。幼いころに父親が遺産を使いきったり、子供の頃に肺結核を患ったり、絵を教わることできず働きながら独学で絵を描いたり。波乱万丈な彼の一生は短いながらも懸命に過ごしたことが今回の展示会で伝わってきました。

 とても貴重な体験をすることができました。

 ビアズリー氏の絵に出会わせていただきありがとうございました。

 

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